新入社員意識調査から読み解く「従業員が辞めない会社」とは?
2025年度「新入社員意識調査」(一般社団法人日本能率協会)によれば、「一つの会社で定年まで勤めたい」「一つの仕事を長く続けて専門性を磨きたい」と考える新入社員は約7割に達しています。これは一見、安定志向の高まりを示しているように見えますが、しかし同時に「副業・兼業」に前向きな層も5割を超えており、企業に依存するのではなく、自らの市場価値を高めたいという意識が強まっていることが読み取れます。つまり、彼らは「辞めない」のではなく、「成長できるなら辞めない」という選択をしています。この前提に立つと、従業員が辞めない会社とは、単に待遇が良い会社ではなく、「成長実感」「心理的安全性」「将来の見通し」を提供できる会社ではないかと思われます。
調査では、自分のキャリアを「描いている」層ほど、「自分の能力を高めること」「新しいことにチャレンジすること」を重視しています。また、強化したい能力として「学習能力」や「新しい価値を生み出す力」が高い傾向にあります。さらに、上司や人事に求めることとして「成長に対する定期的フィードバック」「キャリアについての定期的フォロー」「能力開発の機会提供」が挙げられています。人財育成観点からの評価型目標管理制度が、まさに時代の要請に合致しているのではないかと思います。評価型目標管理制度が有効である理由は三つあります。第一に、「キャリアの見通し」を明確にする機能であること、第二に、「定期的フォロー」の仕組み化であること、第三に、「挑戦を評価する文化」の醸成に寄与することです。
調査では、「昇給が見込めないとき」も高い転職要因となっています。若手は安定志向である一方、将来の見通しが不透明な組織には留まらない傾向にあります。ここで重要なのが、職務階層別人事制度と連動したキャリアパスの明示です。「今どの段階にいるのか」「次の段階に上がる条件は何か」「どの能力が必要か」「昇給幅はどれくらいか」などこれが透明化されているか否かで、組織への信頼度は大きく変わります。評価型目標管理制度が「横軸(成長)」だとすれば、職務階層制度は「縦軸(キャリア)」です。この両軸が連動すると、目標達成 ⇒ 能力向上 ⇒ 等級昇格 ⇒処遇向上という一貫したストーリーが生まれます。若手が求めているのは、この「見通し」です。
「職場の人間関係が悪いとき」は転職意向が最も高い要因であり、約8割が離職を考えます。ここから分かるのは、離職の最大要因は賃金ではなく「関係性」であるという事実です。組織開発視点からの業務改善ミーティングの有効性は単なる業務効率化の場ではなく、関係性を再構築する場として設計します。業務改善ミーティングは、「関係の質を高める」「挑戦を促す」「学習を組織に蓄積する」という三つの効果を持ちます。これは「辞めない会社」の土台そのものです。従業員が辞めない会社の特徴として、①成長を制度化している会社 ②キャリアの見通しを示している会社② 関係性を設計している会社、結論として、従業員が辞めない会社とは、「人を管理する会社」ではなく、「人の成長を支援する会社」です。制度・成長機会・関係性が統合されたとき、従業員は「辞めない」のではなく、「ここで成長し続けたい」と主体的に選びます。


