組織の未来をつくるコラム

人件費の課題は人時生産性の向上

2023年度の最低賃金について、中央最低賃金審議会の小委員会は、全国加重平均で41円(4.3%)引き上げることを目安として取りまとめ、都道府県では10月1日から順次発行されます。最低賃金の引上げですが、今年の改定では、物価高、人出不足等の理由により最低賃金に抵触しない従業員に対しても昇給、ベアを実施した企業も多々あると思います。月給1時間単位の賃金を算出して実施されたと思いますが、これからは「同一労働同一賃金」「職務階層賃金」など、時間単位の賃金を考える機会が増えると思います。近年、企業の経営状況を分析する際、「人時生産性」に着目するケースも増えています。


「生産性」というと、一般的には会社の投入した労働力全体に対してどれだけの利益を得られたのかを図る指標のことを「労働生産性」と呼んでいます。労働力として従業員の総数や従業員全体での労働時間を基準とするなど広い意味で用いられます。それに対して「人時生産性」は従業員一人が1時間単位で生み出した成果を算出する指標であるため、より厳密に正確な数値が得られます。生産性が注目されている理由として「労働力の減少」と「先進国中最下位の労働生産性」が挙げられます。限られた労働力で効率的に成果を生み出すことの重要性とその生産性を測ることに意義があります。



人時生産性は「従業員全員での粗利益高÷総労働時間」で算出されますが、この数値が高いほど従業員一人あたりの粗利益率が高いと言えます。中小企業庁による業種ごとの人事生産性は、製造業:2,837円、小売業:2,444円、宿泊業:2,805円、飲食業」1,902円という結果でした。製造業と飲食業の差が大きいことなど、目標を設定する際は業種ごとの特徴を捉えることが重要です。人時生産性を上げるには、計算式の分子である粗利益率を増加させる、分母である「総労働時間」現象させることが対策ですが、そう簡単ではありません。


製造業では、生産にかかった費用の合計である「製造原価」は製造業を運営していくにあたり利益に大きく関わります。そのため製造原価に算入される「労務費」、生産性の阻害、損失に関わるロスに敏感に対応しています。「生産ロス」「管理ロス」「動作ロス」「自動化しないことによるロス」「編成ロス」などが主なロスです。一つひとつの原因を明らかにして、その対策を講じることは、製造業に限らずあらゆる業種で可能です。収益を生み出し、成果のあがる適切な人員配置、労働時間削減やデジタル化など、時間当たりの生産性向上を意識した働き方が求められています。