日本型人事制度の良さ
日本型人事制度は「終身雇用」「年功序列」が強調されることが多いですが、それ以外にも組織運営にとって有効な特徴があります。第一は「協働性」で、日本型組織は職務の境界が柔らかく、部署や役割を越えて助け合う文化が生まれやすい特徴があります。第二は「人材育成型の組織」であることです。日本型組織では、職務よりも人に注目するため、長期的な能力開発を行いやすい特徴があります。第三は「関係性を基盤とした組織力」です。日本企業では、上司と部下、部署間などの関係性が重視されます。この関係性が強い組織では、情報共有や問題解決が早くなります。ジョブ型人事制度とは、本来「仕事(職務)」を明確に定義し、その職務に対して人を配置し、報酬を決める制度です。
日本では純粋なジョブ型人事制度を作るのは難しく、特に100名以下の企業で日本型の人事制度の良さを取り入れて制度設計をしようとすると「役割×職務」のハイブリッド型になるのが自然です。業務は固定的ではなく、繁忙期や顧客状況によって役割が変わりやすく、「この仕事だけ」という切り分けが難しいです。営業が企画を担当したり、管理部門が現場支援をしたりするなど、人が複数の役割を担うことが多いのが実態です。このため、ジョブ型をそのまま導入すると現場の実態と制度が合わなくなります。その結果、「職務」と「役割」が混在した制度になります。人事制度の設計において、これは失敗ではなくむしろ合理的な選択の形です。
人事構造は、等級は「組織に対して果たす役割の大きさ」で決め、評価は「担当職務の成果」で行う。つまり等級は役割型、評価はジョブ型という組み合わせです。この方式にすると、中小企業の実態に合いやすくなります。制度設計では、等級は「役割の大きさ」で設計する。評価は「担当職務の成果」で測定する。能力開発は「人材育成型」で設計する。この三つを組み合わせることで、ジョブ型の透明性と、日本型組織の協働性を両立した制度になります。人事制度は「ジョブ型か日本型か」という二者択一ではなく、役割を軸にした等級制度の上に、職務成果を評価し、人財育成を進めるハイブリッド型こそが現実的な制度設計と思います、近年、多くの企業で3年から5年程度の短期離職が増えています。
人財育成を進めるにあたって将来の会社の戦力を育てる観点から、3~5年も離職を当たりまえにせず「組織の中で成長している実感が持てる」「職場の関係性が濃厚」「自分の役割が見える」といった環境整備が大事です。離職対策は単に待遇改善や制度整備だけでは十分ではなく、協働性・人材育成・関係性を高める組織開発の取り組みが重要です。定期的に現場メンバーが集まり、日常業務の課題や改善点を話し合う場をつくる業務改善ミーティング(対話型ミーティング)や、業務を洗い出し、役割や難易度を整理し、誰でも理解できる形で共有するプログラム。協働性の高い職場では、仕事が一人の負担にならず、チームで支え合う文化が生まれます。離職率の低い会社には共通点があります。それは「特別な制度」があることではなく、社員同士が学び合い、支え合う日常の仕組みがあることです。


