組織の未来をつくるコラム

【提言】2026年「中東危機」を突破する経営戦略

#収益の鍵を握る「人時生産性」の再定義
2026年3月、私たちはかつてない地政学的リスクの渦中に立たされています。中東情勢の急激な悪化は、エネルギー価格の暴騰を招き、日本経済には「スタグフレーション(不況下の物価高)」という影が色濃く差していきます。原材料費や物流コストが跳ね上がる一方で、国内の個人消費は慎重さを増し、単純な「価格転嫁」だけでは顧客離れを招きかねない。今、多くの経営者が「いかにして収益を確保し、会社を守り抜くか」という正念場に立たされています。

この難局を切り抜けるための唯一にして最大の武器は、売上の規模を追うことではなく、「人時(にんじ)生産性」の抜本的な向上にあります。なぜ今「人時生産性」なのか?

人時生産性とは、従業員が「1時間あたりに生み出す粗利益」を指します。
     人時生産性=粗利益÷総労働時間

この指標が今、決定的に重要な理由は、私たちの経営環境において「コントロール不可能な変数」が増えすぎたからです。原油価格、為替、国際情勢……これらは経営努力で変えることはできません。しかし、「限られた時間の中で、いかに高い付加価値を生み出すか」という内部構造は、私たちの意思と工夫で変えることができます。

コストプッシュ型のインフレ局面において、旧来の「長時間労働で売上をカバーする」モデルは、光熱費や人件費の増大によって自らの首を絞める結果となります。今求められているのは、「分母(労働時間)を最適化し、分子(付加価値)を最大化する」筋肉質の経営への転換です。

#収益確保に向けた3つの具体策
人時生産性を高め、収益を確保するために、経営者が即座に取り組むべき柱は以下の3点です。

1. 「やめる業務」の断行による分母の抑制
生産性が上がらない最大の要因は、過去の慣習で続けている「利益を生まない付随業務」です。複雑すぎる報告書、形骸化した会議、収益性の低い過剰なサービス。これらを勇気を持って「捨てる」ことで、従業員のエネルギーを利益直結型の業務へと集中させます。分母となる労働時間が減れば、同じ粗利でも生産性は劇的に向上し、高騰する労務コストを吸収できます。

2. デジタル・AIによる「定型業務」の解放
2026年、AI技術は実用段階を超え、経営のインフラとなりました。事務作業や在庫管理、単純な問い合わせ対応などの定型業務をテクノロジーに委ねることは、もはや選択肢ではなく義務です。機械にできることは機械に任せ、人間は「顧客体験の向上」や「新商品の企画」といった、人間にしかできない高付加価値な領域にシフトしなければなりません。

3. 「価値」に見合った適正価格の実現
人時生産性の「分子」を高めるには、価格競争からの脱却が必要です。コストが上がったから値上げするのではなく、「生産性を高めて生み出した余力」を顧客満足度の向上に投資し、「この価値ならこの価格で当然だ」と納得いただけるブランド力を築くこと。サービス密度を高め、1顧客あたりの単価を引き上げることが、結果として従業員の賃金上昇と企業の利益確保を両立させる唯一の道です。

#最後に:危機を「進化」の好機に変える
中東の火種が消えない今、不透明な状況は今後も続くでしょう。しかし、歴史を振り返れば、日本企業はオイルショックなどの危機に直面するたび、徹底した効率化と技術革新によって、より強い体質へと進化してきました。
今、私たちが取り組むべきは「嵐が過ぎ去るのを待つ」ことではありません。人時生産性を経営の羅針盤とし、無駄を削ぎ落とし、付加価値を磨き上げることです。従業員一人ひとりが「1時間の重み」を実感し、誇りを持って価値を生み出せる組織へと変革する。その先にこそ、いかなる外部環境の変化にも揺るがない、強靭な収益構造が確立されるはずです。

共にこの難局を乗り越え、次世代に誇れる日本経済の底力を示していきましょう。



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