人財を育て、市場価値を高める目標管理制度(MBO)とは
ビジネス環境が激しく変化する近年、人財開発の現場ではレジリエンスや自律性が注目を集め、柔軟かつ耐性があり、自ら成長していく人財の育成を目指されているようです。人材紹介業ワークポートの調査では、2026年、会社で「5%以上」の賃上げがあっても9割超が転職活動を継続する意向を示しています。離職理由の1位は「キャリア成長不足・スキルの停滞」(36.8%)であり 、転職先で優先する条件も「スキルアップ・市場価値の向上」(56.8%)が最多です。昨年の(株)学情の調査では、8割の学生が「ポータブルスキル」の習得を重視、企業の研修・教育制度を知ると「志望度が上がる」は9割近く上りました。これらの結果から明らかなのは、若年層にとって給与は前提条件であり、本質は自身の将来の市場価値を高められるかどうかであるという点のようです。
ポータブルスキルとは「持ち運び可能なスキル」と訳され、協調性やコミュニケーション能力、論理的思考力、問題解決能力など、業務内容に左右されず、どんな状況でも発揮できるスキルのことを指します。「社会人基礎力」や「トランスファラブルスキル」 など、ビジネスパーソンに必要とされるスキルの一つです。逆に、特定の業種や職種、現在働いている企業内でしか通用しないスキルをアンポータブルスキル「持ち運びできないスキル」と呼びます。これらの調査結果からも若年層は、積極的にスキルアップし、主体的にキャリアを形成していきたいと考える人が増えていることがわかります。ポータブルスキルとは、業界・職種を超えて通用する能力ですが、これらは偶然身につくものではありません。「何を伸ばすのか」「どのレベルまで到達するのか」を明確にする仕組みが必要です。
そこで有効なのが、人財育成型の目標管理制度(MBO)です。一般的にMBOは、業績評価のための制度として導入されることが多いものです。しかし、弊事務所が重視しているのは人財育成型MBOです。人財育成型MBOの特徴は「組織目標と個人の成長目標を接続する」「数値目標だけでなく思考力・行動力を鍛える(PDCAを回す)「フィードバックを対話型にする」3点です。目標とは、単なる「達成ノルマ」ではありません。目標とは「未来の自分を認識・設計する行為」です。そのため、弊事務所では目標設定において「結論から」「全体から」「単純に」考える思考法を取り入れています。まず何を実現するのか(結論)それは組織全体の中でどんな意味を持つのか(全体)やるべきことは何か(単純化)この思考習慣こそが、職種や業界を超えて通用するポータブルスキルの基礎になります。
人財育成型MBOは、やがて組織開発へと進展します。なぜなら、目標達成のためには個人の努力だけでは限界があるからです。「業務プロセスは適切か」「役割分担は機能しているか」「会議は生産的か」こうした問いが自然に生まれます。MBOは個人育成の制度でありながら、最終的には組織文化を変える装置へと進化します。AIの進展、労働人口の減少、市場環境の変化など未来は予測困難です。人財育成に必要なのは、特定業務の熟練だけではなくポータブルスキルの習得です。社員が「ここにいれば市場価値が上がる」と感じられる会社こそ、結果として選ばれ続ける企業になります。目標管理制度は単なる制度ではありません。それは、組織の未来を設計する人事戦略・経営戦略なのです。


