組織の未来をつくるコラム

「これからの企業に必要なのは“管理”ではなく“学習する組織” ― 人材育成×組織開発×ポータブルスキル開発の重要性 ―」

人口減少、人手不足、物価上昇、国際情勢の不安定化、AI・デジタル技術の急速な進展。いま、多くの経営者が「先が見えない時代」に直面しています。これまでのように、経験や勘だけで経営判断を行い、従来のやり方を続けるだけでは、企業経営そのものが難しくなりつつあります。特に地方の中小企業では、「人が採れない」「人が育たない」「人が辞める」「管理職が育たない」いう声を多く耳にします。しかし、その背景を丁寧に見ていくと、単純な「人手不足」だけでは説明できない問題が見えてきます。それは、「人と組織の学習する仕組み」が弱くなっていることです。かつての時代は、業務を正確に繰り返すことが重要でした。マニュアル化と標準化によって一定の成果を出すことができました。しかしVUCAの時代は違います。


変化が激しく、正解が見えない時代には、「指示を待つ人材」だけでは組織が機能しません。むしろ必要なのは、自ら課題を見つけ、周囲と協働し、状況変化に対応する人財です。全体最適を考え。新しい価値を生み出すことができる人財です。今後の企業経営は、「人をどう管理するか」ではなく、「人と組織がどう学習するか」が重要なテーマになるのだと思います。ここで重要になるのが、「人財育成」「組織開発」「ポータブルスキル開発」を別々に考えないことです。多くの企業では、研修は研修、業務改善は改善活動、人事評価は評価制度と分断されています。しかし本来、これらはすべてつながっています。例えば、現場で業務改善の対話を行うと、”他部署理解”、”問題発見力”、”対話力”、”改善力”、”主体性”が育っていきます。つまり、「仕事を改善することそのものが、「人財育成」になっているのです。



さらに、その対話が継続されることで、”心理的安全性”、”協働性”、”組織関係性”、”相互理解”が生まれていきます。これはまさに組織開発です。これから重要になるポータブルスキルとは、特定の職種だけで使える能力ではなく、”課題発見力”、”構造化力”、”対話力”、”ファシリテーション力”、”改善力”、”システム思考”、”PDCA実践力”など、「変化に対応できる力」です。特に今後の中小企業では、「優秀な一部の人」に依存する経営は危険性を増していきます。なぜなら、その人が辞めれば組織が止まるからです。だからこそ必要なのは、「現場全員が考えられる組織」です。前工程を理解する後工程を理解する、他者の仕事を理解する、顧客視点で考える、自分たちで改善する。こうした関係性と学習の積み重ねが、組織の力になります。そのためには、経営者自身視点転換も必要になります。


従来型の、「管理する」「指示する」「効率だけを求める」マネジメントではなく、「対話を促す」「学習を支援する」「挑戦を認める」「失敗から学ぶ」「関係性を育てる」という視点です。短期的には遠回りに見えるかもしれません。しかし、長期的には、「自ら考え動く組織」こそが最大の経営資源になります。現在、多くの企業では、「人がいない」ことが問題視されています。しかし本当に重要なのは、「人が育つ組織になっているか」なのだと思います。そして、人が育つ組織とは、単に教育制度がある会社ではありません。これからの時代、企業競争は単なる価格競争や商品競争だけではなく、「組織の学習速度」の競争になっていくのかもしれません。人材育成×組織開発×ポータブルスキル開発を、“制度”としてだけではなく、「企業文化」として根づかせることが、企業の未来を大きく左右するテーマになっていくのではないでしょうか。


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