VUCAの時代に求められる「成人能力開発」と実務課題から学ぶ力
現在の世界は、VUCAの時代と言われ、中東危機をはじめとする国際情勢の不安定化、資源価格の高騰、サプライチェーンの混乱、急速なAI・デジタル技術の進展など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした時代において、企業やビジネスパーソンに求められるのは、「正解を知っている人」ではなく、「変化に適応しながら学び続けられる人」です。単なる知識習得ではなく、実務の中で課題を発見し、対話し、試行錯誤しながら成長する「成人能力開発」の重要性が高まっています。従来の日本企業では、「経験年数」や「前例」が強い力を持っていましたが、現在は過去の成功体験だけでは通用しない局面が増えています。今後、単純業務は急速に自動化され、従業員には「考える力」「関係性を築く力」「課題解決力」がより強く求められるようになります。
ここで重要なのが、成人の学習は「教え込む教育」だけでは機能しないという点です。子どもの学習は、基礎知識を蓄積することが中心です。教師が答えを教え、学習者はそれを理解し再現することが求められます。しかし成人の学習は大きく異なります。成人は既に経験・価値観・仕事観を持っています。そのため、一方的に知識を与えられても、自分の経験と結びつかなければ行動変容にはつながりません。また、成人は「必要性」を感じなければ学習意欲が高まりにくい特徴があります。つまり、「なぜこれを学ぶ必要があるのか」が重要になるのです。そのため、成人能力開発では、現実の業務課題や生産性向上・業務改善 など、実際の仕事の課題と結びついた学習が非常に有効になります。ここで重要になるのが、「実務課題×対話×循環アプローチ」です。
これからの人材育成では、研修室だけで完結する教育では限界があり、重要なのは実際の仕事を教材にすることです。例えば、なぜ残業が減らないのか? なぜ情報共有がうまくいかないのか? なぜ離職が起きるのか? といった現実の課題をテーマに、チームで対話しながら改善を進めていくのが「実務課題×対話×循環アプローチ」です。このプロセスでは、単なる問題解決だけではなく、「自分の考え方」
「他者との関係性」「仕事の意味」「組織全体のつながり」への気づきが生まれます。特にU理論やシステム思考を活用した対話では、「自分の部署だけ」の視点から、「組織全体」「顧客視点」「未来視点」へと視座が広がります。多面的な視点で考えるようになりこの過程そのものが、成人能力開発なのです。
実務上の留意点として、第一に、「正解探し」にしないこと:VUCA時代には、唯一の正解は存在しません。重要なのは、状況に応じて学び続ける姿勢です。第二に、「現場否定」にならないこと:現在のやり方も、過去には合理性があったはずです。過去を否定するのではなく、「今の時代に合っているか」を対話することが重要です。第三に、「管理型」に戻さないこと:経営者や管理職が答えを押し付けると、主体性は失われます。これからの時代は、指示待ちではなく、自ら考え行動できる人材が必要です。VUCA時代、中東危機のような先の見えない時代だからこそ、企業に必要なのは「変化に強い組織」です。そして、その土台となるのは、実務課題を通じて学び続ける成人能力開発に他なりません。


