組織の未来をつくるコラム

AIは人材育成を不要にするのか? ~AI時代だからこそ人材育成が経営課題になる理由~

生成AIが急速に普及する中、多くの経営者から次のような質問を受けるようになりました。
「AIがここまで進化するなら人材育成は必要なくなるのではないか」
「知識はAIが教えてくれるのだから教育コストを減らせるのではないか」
確かに一見すると、そのように思えるかもしれません。

AIは膨大な知識を持ち、質問すれば瞬時に回答を提示してくれます。
企画書も作る。
議事録も作る。
これまで人が時間をかけて行ってきた業務の多くを代替し始めています。

しかし私は、AI時代だからこそ人材育成がこれまで以上に重要になると考えています。
なぜならAIが代替するのは仕事の一部であり、人の成長そのものではないからです。

これまでの企業教育は、知識やノウハウを教えることが中心でした。

仕事のやり方を覚える。
制度を理解する。
商品知識を学ぶ。
しかし現在、その多くはAIが補完できるようになりました。
分からないことがあればAIに聞けばよい。
「知識を持っていること」
だけでは差別化できなくなっているのです。

しかし一方で、
「その知識をどう使うのか」
は依然として人間の仕事です。
どのような未来を目指すのか。
これらは知識ではなく判断です。
そして判断の質は、その人の成長によって決まります。

成人発達理論では、 大人の成長とは知識を増やすことではなく、物事の見方そのものが変わることと考えます。

例えば入社当初は、「自分の仕事を覚える」ことに集中します。
やがて、「部署全体を見る」「会社全体を考える」そして、「顧客や社会との関係を考える」
ようになります。

これは知識量の違いではありません。
視座の違いです。

私は仕事再設計の支援を行う際、現場の対話を重視しています。
同じ職場で働いていても、見えている世界が全く違うことに気づきます。
営業は営業の視点。
事務は事務の視点。
現場は現場の視点。
それぞれが部分的な正しさを持っています。

しかし全体は見えていません。
対話を重ねることで、
「本当の課題はそこだったのか」
という気づきが生まれます。

これはAIにはできないことです。
AIは与えられた問いには答えられます。
しかし、
何を問いにするのか
その問いが本当に重要なのか
を決めることはできません。
だからAI時代には、
答えを出す能力よりも、
問いを立てる能力が重要になるのです。

私は今後の人材育成の中心はポータブルスキルになると考えています。

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