ジョブ型人事制度を「学習する組織」につなげる組織開発の設計図~役割を明確にする制度設計と、対話によって協働を生む組織開発~
近年、働き方改革や人的資本経営の文脈において、従来のメンバーシップ型から「ジョブ型人事制度」への移行が叫ばれています。職務記述書(Job Description)によって役割と責任を明確にし、専門性に応じた適正な評価を行う。一見すれば、自律的なキャリア形成と労働生産性の向上を両立させる理想的な仕組みに見えます。しかし、現場で多くの経営者や人事リーダーが直面しているのは、「制度を入れた途端に部門間のセクショナリズムが強まった」「『それは私の仕事ではありません』という無関心が生じた」という重い現実です。ジョブ型は欧米の制度を輸入することではなく、日本企業の協働文化を再設計するための役割の言語化です。また、多額に費用をかけて人事制度を刷新した。しかし1年後、現場では「制度はあるが誰も使っていない」。そんな話を私は数多く耳にします。
ジョブ型への移行を真の組織力に変えるためには、制度設計と同時に「組織開発(Organization Development)」を走らせる必要があります。本稿では、個人のポータブルスキルを発揮させるための組織設計について、「成人発達理論」「チーミング」「学習する組織」という3つの視点を結びつけながら、その本質的なアプローチを解き明かします。組織開発はイベントではなく、日常の仕事のやり方そのものを変える営みのことです。日本企業におけるメンバーシップ型の強みは、境界線が曖昧な「グレーゾーンの業務」を、互いの助け合いという暗黙の了解でカバーしてきた点にありました。ここに単なる欧米型のジョブ型を当てはめると、協働の文化が崩壊し、組織は著しく弱体化します。必要なのは、「個の役割の明確化(ジョブ型)」と「集団の協働・関係性の強化(組織開発)」を同時に設計することです。
制度という「骨組み」に、対話と関係性という「血肉」を通わせることではじめて、ジョブ型は機能し始めます。現実課題⇒仕事再設計⇒対話⇒ポータブルスキルといった流れの中で組織風土の変革が確実に生まれます。そうした「協働の意識」や「自律的なポータブルスキル」はどのように育まれるのでしょうか。ここで極めて有効なアプローチとなるのが、「現実の組織課題」に挑むプロジェクト」です。
専門家が提唱する「成人発達理論」によれば、大人の意識段階(思考の枠組みや視座の高さ)は、単に座学で知識を学ぶだけでは深まりません。「従来のやり方や知識が通用しない不確実な課題」に直面し、自身のメンタルモデル(固定観念)を揺さぶられる葛藤を経験して初めて、人間の意識は次の段階へと発達します。
組織のポータブルスキルを高めるためには、プロジェクトを「単発のイベント(非日常)」で終わらせてはなりません。プロジェクトで培った対話の作法や問題解決のプロセスを、日常業務の「チーミング(Teaming)」へと昇華させることが重要です。「チーミング」とは、固定化された組織構造ではなく、「境界を越えて協働し、常に学び合いながら問題を解決していく動的な行動習慣」を指します。日常の業務プロセスそのものが「課題解決の場」であり、「人を育てる場」であり、「風土を良くする場」となる。この循環(サイクル)が回り始めたとき、組織は外部環境の変化に何度でも適応できる柔軟な強さを手に入れます。個人のポータブルスキル(課題解決力、コミュニケーション力、推進力など)は、それを包み込む「組織風土」という土壌があって初めて芽吹きます。制度を通じて人と組織が成長し続ける仕組みをつくることこそ人的資本経営の本質ではないでしょうか。
このコラムの詳しい内容はnote記事の投稿よりご覧ください、


