組織の未来をつくるコラム

対話型リーダーの育成~第1話 なぜ、いま「対話型リーダー」が必要なのか

「人材育成を知識やスキルの付与だけで終わらせないために」

人手不足が深刻化しています。人口減少、最低賃金の引上げ、物価高騰、そしてAIの急速な普及によって企業を取り巻く環境は大きく変化しています。現場では、世代間価値観の違い、管理職の負担増加、仕事の複雑化がすすんでいます。その一方で、多くの経営者は社員に対して、「もっと主体的に考えてほしい」「自分たちで改善してほしい」と期待しています。しかし、従来の「上司が正解を持ち、部下に教える」という育成モデルのままでは、社員の主体性を引き出すことは難しくなっています。 しかし、過去に経験したことのない問題に対しては、これまでの正解を教えるだけでは十分ではありません。


従来の日本企業では高品質な製品やサービスを安定的に提供するために「決められたこと正確に行う能力」が重視されてきました。中小企業の教育訓練も、先輩の仕事を見て覚え、教えられた手順を正しく実践するOJTが中心でした。この方法は、技術を継承し、一定の品質を維持するうえで大きな役割を果たしてきました。しかし、上司が先回りして答えを与え、失敗を強く叱責し、社員が意見を述べても取り上げられない状態が続けば、社員は次第に「余計なことは考えず、言われたことだけを行うようになります。その結果、「与えられた仕事を正しく遂行する能力」は身についても、「自ら課題を発見し、周囲と協力して改善する力」を育てる機会が少なくなります。



「対話」とは、議論の結論を急ぐ前に、お互いの経験や考え方、その背景にある前提を理解し、「自分たちは何を見落としているのか」を一緒に探究する試みです。自分と異なる意見にも耳を傾け、「なぜ、そのように考えるのか」「自分には見えていないものがあるではないか」と問い直します。「対話型リーダーは、自分で全部の答えを出す人ではありません。」その役割は、安心して意見を出せる場をつくり、現場の経験や気づきを引き出し、問題の背景をメンバーと共に考えることです。意見の違いをまとめるのではなく、それぞれの立場から見えている事実を持ち寄り、現場全体で捉え直します。


そして、対話によって見えてきた課題から小さなアクションプランを決め、実践し、結果を振り返ります。振り返りで得た気づきを、次の改善行動につなげていきます。「人財育成を研修室だけでは完結させず、実際の業務課題と結びつける」例えば、待ち時間の短縮、引継ぎの改善、部門間連携、業務削減などのテーマに、「現状を捉える⇒対話する⇒試す⇒振り返る」という循環を作ります。不確実性の時代において、現場自らが業務と役割を再設計し続けるための要となる「ポータブルスキルの開発」とその組織的実装を可能とするのが対話型リーダーの循環ミーティングです。日常の業務プロセスそのものを、「課題を解決する場」「人を育てる場」「組織の関係性を良くする場」に変える。そのために欠かせない存在が、対話型リーダーです。

次回は、システム思考とU理論の視点から、対話型リーダーが「目の前の人」だけではなく、その行動を生み出している組織の構造や関係性をどのように捉えるのかを考えていきます。

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