組織の未来をつくるコラム

求人を出しても応募ゼロ。それなのに「頼りの社員」が辞めていく理由と今すぐできる組織づくり

【2026年最新データ】人手不足倒産が過去最多、「人に頼る経営」から抜け出す人事システムのつくり方


「求人を出しても応募がない。その一方で、頼りにしていた社員が辞めてしまった」。経営者にとって、これは事業の継続に関わる切実な問題です。人手不足が深刻化する今、必要なのは採用の強化だけではありません。今いる社員が無理なく働き、成長できる「仕事の仕組みづくり」です。帝国データバンクによると、2026年度上半期(4~9月)の人手不足倒産は225件。前年同期の214件を上回り、4年連続で過去最多を更新しました。業種別では建設業が70件、サービス業が63件でした。調査は負債1,000万円以上の法的整理が対象です。東京商工リサーチの同期間の調査でも240件と過去最多となり、うち人件費高騰による倒産は130件、前年同期比75.6%増でした。両社の集計は異なりますが、人を確保する難しさと、人件費を支える収益力の問題が重なっていることが分かります。


現場では、仕事のできる人に難しい案件や急ぎの対応が集まりがちです。本人が何とか処理するため、周囲には問題が見えにくくなります。しかし、後輩に教える時間は失われ、他の社員が経験を積む機会も減っていきます。仕事の集中、育成の停滞、属人化、さらなる仕事の集中。この循環が続けば、本人の疲弊と組織の脆さが同時に進みます。平時から仕事を明らかにし、「休まれると困る3つの仕事」を洗い出し、分担と育成ができる状態を整える必要があります。その入口が、タスクインベントリです。日常の業務を具体的な作業に分け、誰が、何を、どのくらいの頻度で行い、どれだけ時間を使っているかを整理します。目的は社員の忙しさを査定することではありません。負担を共有し、組織として仕事を回す方法を考えることです。経営者と社員がこの目的を共有してこそ、実態に沿った情報が集まります。



仕事を可視化したら、共通の進め方を業務標準として整えます。手順だけでなく、求める品質、判断の基準、例外が起きたときの相談先も明確にします。熟練者に通常業務を満量持たせたまま、教育まで求めれば負担は増えます。管理者が業務を調整し、教える時間と練習する時間を確保する。育成を仕事として計画に組み込むことが、分担を進める前提です。仕事の実態が見えたところで、階層ごとの役割も見直します。中小企業では、等級を細かく増やすことより、各段階で何を期待するかを分かりやすく示すことが重要です。一般社員は、基本業務の習得、気づきの共有、改善への参加、熟練者やリーダーは、 難しい仕事への対応に加え、知識の共有と後輩の自立支援などと定義します。管理者が、自分で最も多くの仕事を処理する人のままでは、育成も分担も後回しになります。「人が育ち、仕事が回る状態をつくること」を管理者の役割として明示し、そのための権限も与える必要があります。


 等級は期待する役割と責任の段階を示し、評価はその役割に対する成果、能力の伸長、組織への貢献を確かめます。処遇は、それらを賃金や昇格にどう反映するかを示すものです。本人には、期待される役割、評価する行動や成果、次の等級に進む条件を事前に伝えます。MBOの達成率だけで処遇を機械的に決めず、目標の難しさや担当条件も踏まえて説明することが、納得につながります。目指したいのは、働き続けたい社員が、働き続けられる組織です。そのために、仕事の可視化、標準とOJT、MBO、仕事再設計、等級・役割・評価・処遇を、一つの人事システムとしてつなぎます。分担と育成で生まれた時間を、品質向上や顧客への価値提供に使う。人時生産性の向上を収益と賃上げ原資として還元する。この「経営と人事の循環」があってこそ、仕組みは一過性で終わらず定着していきます。


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