組織の未来をつくるコラム

人手不足の会社で、イノベーションはどう生まれるのか ―「仕事再設計」から、未来を描き、小さく試す組織へ―

人を増やせないのに、仕事は減らない。賃上げを続けたいが、原資の確保も簡単ではない。こうした課題に直面する経営者にとって、「イノベーション」は、日々の経営から遠い言葉に聞こえるかもしれません。しかし、新しい価値を生む入り口は、現場の仕事にあります。仕事を見直す過程で、顧客の困りごとや部署間の行き違いに気づき、これまでとは違う仕組みを試す。その積み重ねが、サービスや事業の変革につながります。日本生産性本部の『生産性年次報告2026』を手がかりに、仕事再設計からイノベーションへ進む道筋を考えます。以下の企業事例は報告書に基づき、U理論とデザイン思考をつなぐ展開は、私の実践上の提案です。


報告書は、AIが成果を生むには、人材育成や組織変革などの投資を組み合わせる必要があると説明しています。「AIをいれたのに、なぜか現場が楽にならない・・・と感じていませんか?」 導入初期には学習や仕組みづくりの負担が先行し、生産性への効果が遅れて表れる「生産性Jカーブ」も紹介されています。これは、AIを入れれば直ちに収益が増える、という話ではありません。短縮できた時間を何に使い、誰にどんな価値を届けるのか。その設計まで必要だということです。仕事再設計では、まず業務を洗い出し、担当者、所要時間、前後の工程との関係を見えるようにします。ただし、一覧を作るだけでは変化は生まれません。「なぜ確認が重なるのか」「後工程はどんな情報を待っているのか」「顧客はこの流れをどう経験しているのか」を、部署を越えて対話することが重要です。



現場を知り、顧客の経験に触れると、「本当は、こういう会社でありたい」という思いが生まれることがあります。私が重視するのは、組織のミッションやパーパスが、社員自身の経験と結びつき、未来の姿として感じられ始める段階です。弊事務所のパーパスは「働きがいと企業収益確保の両輪支援」です。これを実務に置き換えるなら、社員が成長や貢献を実感でき、その仕事が顧客への価値と収益につながる仕組みをつくることになります。U理論のプレゼンシングを、私は、現状の思い込みをいったん手放し、実現したい未来と、自分の関わり方が見えてくる過程として捉えています。最初から明確な言葉にまとまる必要はありません。共有された小さな願いを、試して確かめることから始められます。


その願いを実行可能な案へ進めるのが、デザイン思考です。「具体的に誰にどんな体験を変えるのか?」という具体的な行動・検証の場面です。まず、価値を届けたい相手の具体的な人物像と、置かれている状況を考えます。例えば、歯科医院なら「患者満足を高める」だけでは、行動が決まりません。「初めて来院し、次に何が起きるか分からず、待ち時間に不安を感じる患者さん」と捉えると、案内や情報共有の見直しが具体的になります。このように、社員の主体性を育てるには、試せる範囲、使える時間、判断する責任を明らかにする必要があります。幹部社員は、結果を責める前に「何を学び、次にどう変えるか」を一緒に考えます。報告書は、AI時代には専門知識や経験に基づく判断力が重要になると指摘しています。現場で仮説を立て、試し、対話して検証する経験は、その力を育てる機会にもなります。


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