なぜ職場の信頼は崩れ、どう戻るのか?/民間調査
パーソル総合研究所と九州大学による共同研究「信頼の揺らぎと修復のメカニズムに関する研究」の調査結果が公表されました。本研究は、職場のリーダーとメンバー間における信頼の動態的な変化に焦点を当て、関係性の維持や再構築のメカニズムを解明したものです。対面を前提としない柔軟な働き方が広がる中、職場の信頼関係は固定的なものではなく、日常の出来事によって揺らぎ、修復されながら維持される「動態」として捉えられます。本調査は、信頼を脅かす「揺らぎ」の実態や、それが引き起こす信頼低下のメカニズム、職場への影響、そして信頼を修復するための段階的プロセスを明らかにすることを目的として実施されました。
揺らぎの日常性と判断基準の非対称性:
リーダー・メンバーともに約3人に1人が過去3ヶ月以内に信頼の揺らぎを経験しています。リーダーはメンバーの「業務遂行」を、メンバーはリーダーの「関わり方」を重視して信頼を判断するという視点のギャップ(非対称性)が確認されました。
信頼低下のメカニズム:
信頼の低下は出来事そのものよりも、感情(怒り・反発)や「相手がわざと行った」「誠実さの欠如」といった受容・解釈(原因帰属)によって大きく増幅されます。
職場への悪影響:
信頼が揺らぐと、リーダー側は「育成意欲の低下」や「負担増加」、メンバー側は「モチベーションの低下」や「離職意図の上昇」が生じ、組織の基盤に波及します。
信頼修復の段階モデル:
信頼の修復は一度の謝罪では完結せず、「理解(説明) → 納得(謝罪・行動変容) → 安心(配慮・一貫性) → 再期待(継続的関与)」という4つの段階を経て進むことが示されました。また、日頃から築かれた信頼は、揺らぎの際の影響を和らげる「信頼の貯金(緩衝効果)」として機能します。
本調査結果を踏まえ、組織および人事部門には以下の取り組みが求められます。
対話と背景の共有の促進:
信頼の揺らぎが生じた際、沈黙や距離化に陥るのではなく、事実と解釈を切り分けた上での対話を促す風土づくりが必要です。
管理職・研修プログラムの拡張:
従来の「信頼の築き方」に加え、「信頼低下のメカニズム」や「段階的な修復プロセス(説明・行動変容・継続関与)」を理解し実践するためのマネジメント教育を導入することが有効です。


