組織の未来をつくるコラム

管理職育成の課題など調査/東商

東京商工会議所は4月21日、企業の人材育成担当者を対象に実施した調査結果を発表しました。
近年、新入社員に加え、Z世代の転職者の採用が進む中、企業内の人財育成は新たな段階に入っています。東京商工会議所の調査では、Z世代に対して「ITスキル」「タイパ意識」「自己成長意欲」が高く評価される一方で、「打たれ弱さ」や「価値観の違い」が指導上の課題として挙げられています。これらを踏まえ、組織内の中堅層が次世代育成の鍵を握ることは明白です。管理職育成の課題としては、管理職を希望しない中堅社員の増加(34.5%)、育成意欲・能力を持つ上長の不足(32.1%)、管理職候補者の不在(29.7%)などが挙げられています。個人的には中堅社員に対するマネジメント教育などの受講機会が少なかったことなどが原因と思います。


管理職候補の中堅職員が管理職にあたり特に身につけて欲しいスキルや知識として、後輩・チーム育成力(47.7%)、業務管理・進捗管理能力(46.4%)、問題解決力(36.9%)などが挙げられています。Z世代育成のアプローチとしては、ITスキル、自己成長志向、効率重視の視点(タイパ)などの強みとストレス耐性の弱さ、異世代との価値観の相違、承認欲求の強さなどの把握などが大事です。その上でZ世代の価値観・行動様式を理解するメンタリング研修の受講などがお勧めです。「聴く力」「共感」「リフレクション」を育む場のトレーニング、対話型リーダーシップ研修なども効果があります。実施の事例を題材にディスカッションを通じて問題解決能力や実践的スキルを育成するケースベース型育成力トレーニングはOJT現場での指導力養成には最適です。



東京商工会議所調査によると、Z世代に必要な社会人基礎力は主体性、規律性、実行力、課題発見力、傾聴力、柔軟性などのポータブルスキル育成が大事なようです。また、若手社員の育成に困っていることの3位は「承認欲求の強さ」のようです。成功体験の少なさからくる欲求であれば自己効力感を高める成功体験の設計、小さな成功を積み重ね「できた」を可視化する支援、傾聴と承認のコーチングスキルで本人の自己肯定感を高める支援など。仕事から離れて日々の業務の意味づけを自分自身で振り返るリフレクションの導入など、ポジティブなマインドセットの醸成には欠かせません。マズローの5段階欲求説では「自己実現欲求」に次ぐ欲求ですので、気長に見守ってやることが良いかもしれません。


ポータブルスキルの育成には、プロジェクトベース学習(PBL)が効果的です。目的設定→行動→振り返りを通じた「実行力」「課題解決力」の習得を目指します。教育現場では「課題解決型学習」とも呼ばれ、知識の暗記などのような生徒が受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し解決する能力を養うことを目的とした教育法のことです。これらを組織文化としての育成推進するためには、失敗を許容する学習文化(Psychological Safety)の醸成、「育てること」が評価される人事制度の導入が必要です。Plan:役割に応じた育成目標の明確化、Do:OJTとOff-JTのバランスを取った実施、Check:定期的なフィードバックと360度評価、Action:振り返りと次の育成計画立案・・人財育成PDCAサイクルの設計など「ひと」を育てることが企業経営の推進力になります。