組織の未来をつくるコラム

今後、ミドル世代の転職は増加傾向が続く

日本の労働力人口のうち、半数近くを40代・50代のミドル世代が占めています。少子高齢化が進む日本においては、今後さらにミドル世代が占める割合が増えると見込まれています。少子高齢化を背景とする構造的な人手不足に加え、企業は事業変革のために豊富な知見・経験を持つ人材を求めており、各種転職者データを分析すると、40代・50代の転職者数の伸びは、全体よりも大きいことが分かります。人気の高い35歳~40代前半の層は採用競争が特に激しいため、採用対象を40代後半〜50代まで広げる動きも見られます。また、働く側も、定年延長や年金受給年齢の引き上げを受け「できるだけ長く働きたい」と考える方が増えています。


ミドル世代の転職理由は、労働環境や就労条件などの待遇改善にとどまらず、自身のスキルや経験をさらに活かせる職場を見つけることに重点が置かれているのが特徴です。家族の状況や自身の健康、ワークライフバランスなど、さまざまな要因を考慮し、より自分に合った働き方を選択するためにミドル世代で転職する方も少なくありません。ミドル世代の転職市場は活発化している背景には団塊世代の大量退職と人口減少による若手人材の不足です。これにより、企業は管理職や専門職の求人を増やし、即戦力として活躍できる経験豊富な人材を積極的に求めるようになってきました。また、デジタル化やグローバル化など、急速に変化する技術や社会環境に柔軟に対応できる人材は、世代を問わず高く評価されるようになってきました。



最近、大手企業の人員整理や早期退職のニュースが続きますが、地方企業にとっては、大手企業の人材流入は成長のチャンスです。上場企業による早期退職募集の増加は、地方移住がキャリア形成の新たなチャンスとなると考える人も多くいるようです。都市部では一部の業務に特化した働き方が一般的ですが、地方企業では多様な業務に取り組む機会が多いため、多種多様なキャリア形成の機会・環境が整っています。優秀な人材を活かしたイノベーションを実現していくことが成功の鍵となります。戦略としては、「組織の歯車ではなく、経営に近い立場で影響力を発揮できる」「幅広い業務を任せられ、意思決定に関与できる」「新規事業や事業改革のリーダーを担う」などの裁量の広さを強調した募集が効果的かも知れません。


転職側としてのミドル層の多くは、ある程度の社会経験を積み、管理職としての能力や自身の専門性を築いている段階にあります。そのため転職活動ではこれまでの経験やスキルを活かし、キャリアアップを目指すケースが多い点が特徴として挙げられます。ミドルクラス転職を実現した後の収入変化においては、年収が増加したケースは全体の4割に上りました。一方、転職によって収入が減少した割合は、全体の3割程度という統計データがあります。必ずしも転職によって年収がアップするとは限りませんが、年収が1割以上増加した割合は23%~28.4%と、転職が年収アップの1つの機会になっていることがわかります。いずれにしても企業がどのようなビジョンを描いているかがカギになりそうです。