組織のパラダイムシフト・必要性について・・・
不確実な時代の変化によって社会や個人、科学領域などにおいて「ものごとの見方」が転換することをパラダイム・シフトといいます。さまざまなシチュエーションで用いられています。組織のパラダイム・シフトの背景として、従来の日本型人事システム(メンバーシップ型)は、大企業を中心に「終身雇用」「年功序列」「職務の曖昧性」「異動・配置転換による多能工化」によって企業の安定と長期育成を実現してきました。しかし、現代はデジタル技術の急速な進展、働き方改革の法整備、多様な働き方の増加など個別最適を意識しつつも全体最適、職務・成果重視の方向に舵を切る必要があります。各階層の職務の明確化と責任の所在の明示が必要となり、成果基準・スキル基準での評価・配置が求められる時代になりました。キャリアの自己決定力(主体性)を高めることで生産性とエンゲージメントを両立させる仕組みが必要な時代です。
また、2040年には生産年齢人口が現在よりも約1,000万人減少人口することへの対応としてのパラダイム・シフト。将来の人手不足を考えると企業内の人材リソースの最適配置が不可欠となり、高齢者・女性・外国人など多様な人材を活かす柔軟な制度が必要となることは確実です。働き方改革等が薦めるジョブ型の意義は、「人に仕事をつける」から「仕事に人をつける」への転換、業務の専門性向上と再配置の効率化が実現します。スキルベースで職務・報酬を明確に設計することで労働市場の流動性が高まり、多様な人材が活かされる可能性があります。「同一労働同一賃金」、非正規雇用との差の是正、構造的な格差解消にも寄与します。日本の時間当たりの労働生産性の低さは、欧米諸国から指摘されるように人事の機能分化をせず専門分野の労働者がパートタイマーの単純作業にも従事することです。
また、日本の企業でパラダイム・シフトが進まない理由として、終身雇用・年功的思考が根強く、「変化=不安」ととらえやすい心理的障壁が大きいのかも知れません。職能資格制度を採用している企業では、人事評価・等級制度・賃金体系が職能等級制に紐づいているため、変更にコストと混乱が伴うと考えることもあるのかもしれません。「空気を読む」組織文化がある場合、明文化・責任明確化を敬遠する傾向あり、職務定義や目標設定・フィードバックが不得意な管理職が多くマネジメント力の課題があるのかも知れません。対応策として、一般従業員には「ジョブ型で求められる能力」を可視化して、キャリア自律研修、スキル棚卸・キャリア面談を行う、管理職・マネジメント層向けには職務定義書(ジョブディスクリプション)の作成研修や目標設定と成果評価のトレーニングを行うなどパラダイムの変化に期待したいです。
パラダイム・シフトに対応できる組織とは、組織の中で従業員が自分の仕事だけを見るのではなく、時代の流れやチームや組織全体を俯瞰的に見ることで多くの気づきが生まれます。今や組織はイノベーションを起こさなければ生き残れない時代といえるかもしれません。パラダイム・シフトの世界では過去のデータや経験では対応できない正解のない問題が発生します。論理的な思考、当たり前を疑う思考、発想をひろげる思考などを学び、実践する必要があります。多様性を重視する時代において、公正かつ透明性のある企業風土は不可欠です。ジョブ型等級制度と連動する給与・評価の制度とイノベーションに向けた対話型組織開発のミーティングはかなり有効です。変化に対応できる組織となるためには今までの「ものごとの見方」から新しい「ものごとの見方」を企業風土として醸成すること。ただし、時間がかかります。