児童のいる母親の多様な就労促進について
現在、日本は急速な人口減少と高齢化に直面し、特に地域や中小企業を中心に深刻な人手不足が広がっています。一方で、7月7日に発表された2024年の国民生活基礎調査によれば、児童のいる母親の就労率は80.9%に達し、特に非正規雇用・短時間勤務を含む多様な就労形態が増加しています。母親の就労形態正規雇用は、34.1%、非正規雇用36.7%、その他(自営・役員等)が10.1%という結果でした。正規の従業員として働いている児童のいる母親の割合は2004年16.9%でしたが、今回は34.1%と倍増しています。これは育児・介護休業法の度重なる改定により働きやすい職場環境が充実した結果ということも推測されます。現在は継続的に短時間勤務をしようとすると非正規という選択肢しかないことが児童のいる母親の課題です。
子育てと就労の両立は、身体的・精神的ストレスの要因になり得ます。そのため仕事と家庭生活の両立を念頭に短時間労働を選択する母親も多いと推測されます。短時間正社員制度やフレックス勤務制度の導入など多様な働き方が選択できる雇用環境の整備・就業規則の改定などこれからの時代には大事かと思います。また、正規雇用者には、職種やスキルに応じたジョブ型雇用とキャリアパスの整備など男性・女性に限らずその意欲と能力に応じた働き方ができる制度構築も必要です。児童のいる従業員を雇用するメリットとして、一般的に限られた時間の中で業務を遂行するため効率的・計画的な業務遂行能力があると言われています。子育て中の労働者は学校や町内会など地域に根付いていて離職率が低い傾向があるようです。ただし、育児疲労による生産性の低下や退職リスクも潜在していますので、児童を持つ労働者への健康配慮は必要です。
子育てと就労の両立は、身体的・精神的ストレスの要因になり得ます。育児中の従業員に対するメンタルヘルス面談や休暇制度の柔軟運用などの健康支援対策の検討は必要です。また、日常的にチームで職務を補い合う相互支援の企業文化の醸成は大事です。従業員の子の体調不良など急な欠勤でも、チーム内での業務分担とシフト管理制度の構築がしやすくなります。長時間残業が難しい女性労働者なので、短時間で成果を出す働き方の見える化と業務改善の必要性はあります。女性に多い職場では、働く人が消費者や生活者の視点を持ち、新しい価値創出につながる可能性があります。過去の経験、現在の価値観では解決が難しく課題にも違った視点、対話が大事な時代です。
企業が児童を育てる母親等の多様な人材を積極的に活用することは、「多様性と包摂」人的資本経営の実現でもあります。また、SDGs7番目の目標であり、弊事務所のミッションでもある、「働きがいのある仕事と経済成長」への貢献でもあります。今後に向けた企業姿勢と社会的意義を内外の示すことに繋がります。児童を持つ母親の雇用促進は、企業にとって単なる労働力の補充ではなく、現在注目される女性活躍推進法・育児介護休業法の対応強化でもあり、新しい価値創造の源泉です。多様な就労形態の整備と健康・生活への配慮を行うことで、企業の競争力と社会的価値は確実に高まります。