組織の未来をつくるコラム

急ぐべきは組織のイノベーション

一般的に「イノベーション」は、モノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに革新的なテクノロジーやアイデアを取り入れることで、従来にない価値を創出し、社会に大きなインパクトをもたらす取り組みのことを言います。本来、イノベーションは世の中に存在する課題を解決することを目指した結果、たまたまイノベーションを起こしてしまったというのが本来の姿だと私は思います。日本企業の多くがイノベーションを筆頭の経営課題に掲げ、さまざまな取り組みを行っています。しかし、イノベーションという手段を用いても解決すべき課題を設定していないことが多いようです。これからの時代は、社長や経営者が社員を「管理(マネジメント)」して仕事を行っていく時代から、社員同士が相互に影響を与えながら新しい価値を共創していく時代へ変わっていきます。そのような意味でもマネジメントから対話の組織へのイノベーションが求められています。


従来の日本型の組織体制から、組織に内在するエネルギーや主体性を引き出す新たな機能で、人と人の「関係性」の変化や「相互作用」で、組織を変化させていくという考え方を社内へ浸透させていく必要があると思います。そのためには、ジョブ型人事制度の構築や評価制度の在り方などの検討はもちろんですが、社員同士が課題に向けて話し合う場(プロジェクト)を創ることが大事だと考えています。これは大きな企業でなくても出来ることで、企業理念に基づいて本来果たすべき役割(目標)と現状にギャップを生み出している要因を探ることでイノベーションの種をメンバー同士で共有できます。今までと違ったパラダイムで考えていかないと答えが導けませんが、内省による変革が「システム思考」、ユーザー視点で変革をもたらす「デザイン思考」という二つの理論で考えると良いと思います。



これらプロジェクトを動かす存在、企業でのビジネスリーダー育成は最重要課題といっても過言ではないと感じています。今までPM理論でのビジネスリーダーの役割として、「目標達成機能」と「集団維持機能」が言われていました。これに加えてビジネスにおいてリーダーに求められる重要な能力のひとつが、イノベーションを促す能力です。様々なデータから積極的に分析を重ねながら、課題と期待を強く打ち出して、新しいビジネスモデルを描く能力が必要になります。社会が多様化しているのと同様に組織内のチームメンバーの専門性や個性も多様化しており、すべての事柄にリーダーが主導的に決定することはほぼ不可能です。そのため優れたコミュニケーション能力や人間関係構築力、そして多様な考え方を受け入れる能力、メンバーの多様な専門性や個性を活用し、状況に応じてリーダーとメンバーの役割を柔軟に変え適応することが重要です


「人がもっとも成長するのは仕事を通じた経験(学習)である」という概念は、ロミンガーの法則でもありますがイノベーションを目指すプロジェクト・三―ティングでも同じ効果があります。ロミンガーの学習法則である70%が経験、20%が上司からの学び、10%が研修の考え方はそのままミーティングプログラムに活用できます。対話型ミーティングでは事前準備が重要になりますが、会議スキームとして構築し、レジュメも関連する資料を準備し、当日は自由に意見を発する場を演出する新しいタイプのリーダーがいれば組織は変わります。対話型の会議を進行する新しいタイプのリーダーを育てるためにも、組織のイノベーションは急ぐべきと思っています。イノベーションの種を育て、試作から完成にいたるまでの改良にも多くの時間を要します。