地方中小企業の人財定着の推進施策
リクルート研究所は、「全国就業実態パネル調査」の開始から10年を迎えるにあたり「10年の“働く”を解析する」と題した報告書を公開しました、日本人の働きかたの実態は大きく変化しており、地方中小企業の「人が辞めない組織づくり」を考える上で極めて示唆が大きいと考えます。報告書では“働く”の実態について、①就業と生計の安定、②健全で柔軟な職場環境、③多様な人が活躍できる環境、④学びと成長の機会の4つの要素で解析しています。就業率は着実に上昇し、失業者・非労働力は減少傾向にあり、今後の更なる人手不足を予感させます。女性、シニア、非正規のキャリア形成支援は企業の重要テーマになりそうです。
まず、生活とキャリアの安定をつくる施策から見ていきます。地方では特に「正規化」の見通しが不透明だと離職率が上昇する傾向にあります。等級制度・職務基準を簡易化し「正規登用基準」を就業規則で明示。人的資本経営の観点から「スキル基準表」を作成して等級制度と連動する賃金体系を可視化。人時生産性の改善を賃金成長のリンクさせる仕組みを導入すれば、業務変革の成果が直接賃金向上につながり従業員の取り組み方も違ってきます。柔軟な働き方による続けられる職場について。地方の中小企業では、対人サービス・現場職が多く中抜け制度やシフト自立化など「できる範囲の柔軟化」が定着のカギになります。
保育園送迎・家族介護に合わせた「1時間中抜け」制度や月内で勤務時間を自分で調整できる「自律シフト」などの導入です。また、フル・リモートではなく事務作業の一部を在宅化するだけで定着効果を大きい。女性・シニアの就業継続率が向上しているという調査結果は、地方の中小企業の重要なヒントです。働きたいシニアは多いようですが、ミスマッチ解消と役割再設計が急務です。シニア向け「限定職務」「週20時間の専門職」など新しい制度設計も有効。係長・主任級で25.9%に女性管理職が上昇しています。地方の中小企業でも「最初の一段」をつくることで流れは加速できます。女性リーダーのピアサポート会議などの交流の場つくるのも一手です。
地方の中小企業では「学ぶ機会」がないことが離職理由として挙げられます。専門的仕事の人事教育以外に、現場課題をテーマとした職場内勉強会の実施は人材育成に貢献します。人口減少下の地方では、採用よりも「辞めない仕組み」の価値が急上昇しています。経営計画に「定着率KPI」を設定する、次世代幹部候補の育成フレームを導入するなどの経営戦略と人材戦略の紐づけが必要です。職場の労働環境が進む中、主体的な学びはのびていないことを調査では懸念しています。仕事のエラーや失敗を共有して学ぶ文化を作るなど、企業特性に合わせたユニークな制度設計を考えていくことも人財定着につながると思います。


