人時生産性を高める業務再設計と仕事再設計~U理論とデザイン思考を活用した、現場との共創による組織変革~
人口減少に伴う壊滅的な人手不足、中東危機をはじめとする地政学リスクやコスト高騰、そして引き上げられ続ける最低賃金。我々を取り巻く外部環境は、かつてないスピードと激しさで「従来のビジネスモデルの賞味期限」を突きつけています。前々回は、外部環境の構造変化に対応するには、過去の成功体験を手放すパラダイムシフトが必要だとのべました。前回は、長年の継ぎ足しによって業務が肥大化・複雑化し、現場が披露している問題を取り上げました。なぜ現場はこれほど努力しているのに、利益と賃上げ原資が生まれないのか?その答えは、単なる精神論や細かな効率化(業務改善)を超えた「業務と仕事の再設計(リデザイン)」、そしてそれを推進するための「深い対話を通じたイノベーションの創出」にあると考えます。
多くの現場で最初に取り組まれるのは、作業手順の見直しやツールの導入といった「業務改善」で多いようです。もちろん、手順の標準化や無駄の削減など業務改善は重要です。しかし、環境の変化が構造的である以上、従来のプロセスを前提とした部分最適(改善)だけでは、既存の枠組みから抜け出せず、到底この危機を乗り越えることはできません。業務改善は必要ですが、それだけでは不十分です。構造的な環境変化に対応するには、既存の業務を前提とせず、仕事の目的、流れ、役割から見直す再設計が必要です。問題の本質は、「不確実性の高い時代に合致していない業務プロセス(構造)」と、そこに「縛り付けられている人々の役割(関係性)」との間に生じている深刻な乖離にあると考えます。組織の垂直割り(セクショナリズム)によって情報や業務が細分化され、全体像が見えないまま「過去の慣習」に基づく無駄なチェックや報告業務が残存しています。
業務再設計とは、組織全体の業務プロセスを見直すことです。
仕事再設計とは、そのプロセスを担うひとり一人の役割、権限、タスク、働き方を見直すことです。イノベーションを起こし、人時生産性を飛躍的に高めるためには、「業務再設計」と「仕事再設計」の2段階のアプローチを正しく接続しなければなりません。まずは、組織全体の業務プロセスを一度解体し、全体最適な一本の流動へと再構築します。「そもそもこの業務は、顧客にどのような価値を提供しているのか?」という本質的問いからスタートし、ECRSの原則(排除・結合・再配置/順序交換・簡素化)を大胆に適用する。不要な承認フローや重複作業を丸ごと排除・統合し、テクノロジーに任せるべき領域を切り離すことで、業務の総量そのものを圧縮します。
どれほど優れた業務・仕事の再設計図を描いたとしても、それを上から押し付けるだけでは現場の抵抗に遭い、形骸化する。構造改革を真のイノベーションへと昇華させるエンジンこそが、経営と現場、あるいは労働者と経営者が対等に向き合う「労使対話(共創の場)」です。そして、この対話の質を高めるための最適解が、「U理論」と「デザイン思考」を融合させた対話スキームです。「深い対話によるビジョンの共有(U理論)」と「小さな実験の高速回転(デザイン思考)」のサイクルこそが、現場の心理的安全性を担保し、誰も予想しなかった革新的な業務プロセスやサービス——すなわちイノベーションを生み出す強固な駆動基盤となります。いま、私たちに求められているのは、過去のやり方をマイナーチェンジすることではない。未来のあるべき姿から逆算し、覚悟を持って組織の構造と対話のあり方を再設計することではないでしょうか。
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