収益を確保できる組織をつくるために、人財を育てる
日銀の利上げを機に考える、地方中小企業の生き残り戦略と人的資本経営
利上げが突きつける「これまでの経営の限界」
2026年9月18日、日本銀行は政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ引き上げました。今後の追加利上げについても、経済・物価情勢を踏まえて判断されることになります。地方中小企業にとって、今回の利上げは単なる金融政策の変更ではありません。これまでの経営のあり方を問い直す契機になると考えています。借入金利の上昇は、企業の支払利息を増加させます。設備投資や運転資金を借入金に依存している企業ほど、その影響を受けやすくなります。住宅ローンなどの負担増加が家計の消費行動に影響する可能性もあります。個人消費が弱まれば、小売業、飲食業、サービス業だけでなく、取引先を通じて製造業や運送業などにも影響が波及することが考えられます。もちろん、利上げが必ず消費減少につながるわけではありません。賃金上昇や預金金利の上昇など、家計にとってプラスの側面もあります。
しかし、これからの経営に求められるのは、売上が増え続けることを前提とした経営ではなく、環境変化の中でも利益とキャッシュを生み出せる経営構造への転換ではないでしょうか。収益が悪化すると、多くの企業は経費削減を検討します。不要な経費を見直すことは当然必要です。しかし、単純な人件費削減や教育研修費の削減だけで利益を確保しようとすると、別の問題が生まれる可能性があります。人員を減らせば、残された従業員の負担が増えます。教育を止めれば、新しい仕事を習得する機会が失われます。改善活動が停滞すれば、属人化や非効率な仕事がそのまま残ります。「収益が悪化したから人材育成を削る」のではなく、「収益を確保できる組織をつくるために人材を育てる」という発想への転換が必要です。経営戦略と必要な能力を結びつけ、実際の仕事の中で育成を進めることが重要です。
今後、地方の中小企業が収益を確保するうえで重要になるのが、人時生産性の向上です。人時生産性とは、従業員が働いた1時間当たり、どれだけの成果や付加価値を生み出したかを示す指標です。従業員が懸命に働いていても、仕事の仕組みそのものに問題があれば、努力が十分な成果につながりません。
そこで必要になるのが、仕事再設計・業務再設計です。まず、タスクインベントリによって仕事を洗い出します。誰が、何を、どのような手順で行い、前工程や後工程とどうつながっているのかを明らかにします。そのうえで、ECRSの原則を用いて、不要な仕事の排除、重複業務の結合、作業順序や担当の再配置、手順の簡素化を検討します。時間を削減することから、価値を生み出す仕事へ時間を再配分することへ。これが、私の考える収益確保型の仕事再設計です。
仕事再設計は、経営者や管理職だけで進めることもできます。しかし、現場の仕事の実態を最もよく知っているのは、日々その仕事を担っている従業員です。私は、仕事再設計を従業員参加型の対話と実践によって進めることが重要だと考えています。ただし、対話に参加するだけで能力が向上するわけではありません。適切な問いかけ、実践の機会、振り返り、上司からの支援が必要です。仕事再設計を単なる改善活動で終わらせず、人財育成の場として設計することが重要なのです。利上げ、人手不足、人件費の上昇、消費行動の変化。地方の中小企業を取り巻く環境は、今後も変化していくでしょう。人的資本経営とは、人材を大切にするという理念を掲げるだけのものではありません。人の能力と可能性を企業の価値創造につなげ、その成果を人と組織の成長に還元する経営だと私は考えています。
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