地域経済報告さくらレポートから介護事業を考える
日本銀行は5月20日、「地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)」を発表しました。「人手不足感が強まるもとでの地域企業の投資・事業戦略―」をテーマに本支店・事務所が集めた生の声、最近の動きを紹介しています。幅広い業種・企業規模の地域企業が、「人手不足感の強まり」を経営上の 優先課題と捉えており、人手不足が事業活動の制約になっているとの声が多く聞かれ、投資・事業戦略面で様々な対応や工夫を進めていることが分かったそうです。一方、介護業界は少子高齢化などを背景に、深刻な人手不足に直面しています。このような状況を打開するため、IT化による業務効率化、職場環境の改善、外国人材の受け入れなど、さまざまな対策が模索されています。
介護業界では資格者がさまざまな職務を担当していますが、採算性の高い事業に高度人材を集中し、他業務は簡易化してパート対応するのが有効かと思います。業務の機能分化と再設計(タスクシフティング)を行い、生活支援、清掃、送迎、見守り、レクリエーション補助など非医療業務を無資格のパートタイマーが担う。資格者はケアプラン作成、医療的ケア、認知症対応、利用者家族との連携など高度業務に集中。見守り業務はセンサー・カメラ・AIによる転倒検知、夜間見守りの自動化を実現します。音声入力・AI記録自動化システムで記録負担を軽減するなどAI・ICTの活用による省人化と質向上を目指します。
利益率が低い通所介護では、高付加価値路線で少人数でも収益確保。低い利用者層から高収益層へ転換し、少人数でも採算が合う運営に転換します。そのためには個別機能訓練、リラクゼーション、口腔ケアプログラムなどを取り入れ高付加価値化、単価アップを目指します。大画面ディスプレイとアプリでデジタルレクリエーションを導入し認知症予防や運動プログラムを効率化します。地域・企業間の資源共有と外部人材活用を目指し、事業連携として近隣法人と夜勤代替・職能研修を共同で実施します。他業種や都市部の副業人材をオンラインで活用するなど人材の受け入れを可能とする仕組み作りも考えられます。企業間の人材等資源共用の拡大です。
期待される効果として、1人当たりの処理件数・ケア品質の維持と拡大という生産性向上に寄与します。資格者の業務負担軽減、適材適所による満足度向上により離職者防止の可能性が期待できます。配置要件の課題はありますが、有資格者が不足しても、パートナー制度とAIで運営可能となるなどサービス継続性が担保されます。また、高齢化地域での持続可能な介護インフラのモデルとなる可能性があります。良いことばかりではなく、デジタル導入時には「現場の不安・不信」に対して丁寧な説明と小規模試行から進めることや無資格者には業務範囲の明確化と倫理的配慮を徹底するなど留意する必要があります。