組織の未来をつくるコラム

健康経営優良法人制度について

2017年度からスタートした、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」は、その認定企業数が年々増えており「健康経営優良法人2025」には大規模法人部門3,400法人、中小規模法人部門では19,796法人の認定発表がありました。健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。認定されると、企業イメージを向上して採用活動で他社と差別化できたり、国や自治体から助成金や補助金を受けられたりと、多岐にわたるメリットがあります。この度、この認定制度申請のお手伝いをすることになりました。


求人・採用が難しい時代に、一旦人手不足に陥ってしまうと、従業員一人一人の負担が重くなり、長時間労働が常態化し、やがて従業員の健康状態に悪影響を及ぼしてしまう場合があります。心身の健康を損なってしまった従業員は、本来のパフォーマンスが発揮できず、休職や退職に追い込まれてしまうこともあるかもしれません。健康経営とは、従業員の健康問題を経営視点から着目する取り組みです。“健康管理は従業員の自己責任”という考え方ではなく、健康管理を企業の成長のための「投資」と捉え、従業員の健康維持に積極的にコミットしていくことを指します。従業員が常に健康な状態で仕事に取り組むことできる環境を整備することは会社の責任です。また、人手不足の解消や従業員のモチベーション向上につながり、ひいては中小企業が抱えるさまざまな課題を解決することにもつながります。



2024年度改訂「健康経営ガイドブック(健康経営優良法人認定事務局編 )」によると、健康経営を実践するには、経営基盤から現場の施策まで、さまざまなレベルで取り組みが連動・連携していることが重要としています。そのため、個別の施策だけを考えるのではなく、健康経営の実践に向けた取り組みを体系化して検討する必要があります。企業のビジョンや理念の実現に向け、健康経営を通じて何を実現するかの方針を示したものが「健康経営の推進方針」です。方針実現のために達成する目標もまた連動する概念であり、目標の達成状況を確認する指標、達成目標年限がKGI(重要目標達成指標)その進捗確認としてのKPI(重要業績評価指標)の設定・見える化はMBOそのモノに見えてしまいます。


「健康経営ガイドブック」では、健康経営の効果に対し、施策内容やインセンティブだけでなく、職場の文化や風土といった組織的な要因が従業員の参加率や効果を高めるために必要な要素であることが指摘されていることを踏まえ、健康経営の継続的な実践により育まれる企業の健康風土への醸成が有効かと思います。健康経営優良法人認定に向けた組織体制は経営本部と担当者ですが、企業内にある組織開発プロジェクトチームを施策推進の実践チームにと考えています。メンバーはもともと各事業所の管理職員たちで、新しいタイプのリーダー候補であり健康をテーマとして事業所を纏める一石二鳥の実践課題です。今後が楽しみです。