対話型リーダーの育成 第2話 ~問題は人ではなく関係性の中にある
[システム思考とU理論で、現場の見え方を変える」
この回では、リーダーが目の前の出来事や個人の態度だけを見て判断するのではなく、システム思考を用いることで、その行動を生み出している構造や関係性を考えます。システム思考は、目の前の出来事を個人の問題として片づけず、その背後にある関係性や構造を捉えるための視点です。一方、U理論は、私たち自身が過去の経験や思い込みをいったん脇に置き、現場を新しい目で捉え直すためのプロセスです。対話型リーダーには、この二つの力が必要です。組織の構造を見る力と、自分自身の見方を変える力です。現場では、問題が起きると個人に原因を求めがちです。「主体性がない」「協調性がない」「報告が遅い」対話型リーダーがシステム思考を用いる最大の意義は、「人と問題を切り離し、仕組みの根本原因に全員でアプローチできること」にあります。
システム思考では「誰が悪いのか」ではなく、「その行動が繰り返される構造は何か」と考えます。
この「個人原因論」は見た目の安心感を与える一方で、構造的な問題の発見を遅らせ、改善を長期化させることになります。システム思考とは、出来事だけでなく、その背後にあるパターン、さらにその原因となる構造、そして価値観・前提を捉える思考法です。しばしば「氷山モデル」で表されるように、目に見える出来事は氷山の一角であり、その下に大きな構造が横たわっているという考え方をします。組織の構造をつくっているのは、制度やルールだけではありません。その背後には、「上司が決めるべきだ」「失敗してはいけない」「自分の担当以外には関わらない」といった、組織内の暗黙の前提があります。この見えにくい前提に気づくために役立つのが、U理論の考え方です。
U理論(Uプロセス)は、過去の延長線上ではない本質的な解決策を生み出すための変容のフレームワークです。対話型リーダーは、U理論のプロセス(現状把握から一体感・ひらめきを得て、小さな実践へつなげる循環)を現場に実装し、正解のない複雑な課題をメンバーと共に解決する役割を担います。U理論の「ダウンローディング」とは、過去の経験や思い込み、知識を無意識に自動再生し、古い枠組みで状況を判断してしまう思考のクセのことを言います。ダウンローディングを抜け出すためには、今の判断基準(当たり前)を捨てることです。U理論の「シーイング(観る)」とは、過去の経験に基づく判断をいったん保留し、目の前で実際に起きていることを観察する段階です。対話の場の様々な事実・意見を、過去の判断を保留して、新しい見方の好奇心を呼び起こし観察します。
センシングでは、自分の立場から現場を見るだけでなく、他者や顧客、前工程・後工程の立場に身を置いて、仕事全体を捉え直します。自分の外側から現場を見直すことで、これまでとは異なる問題の捉え方が生まれます。それがセンシングにおける視座の転換です。対話型リーダーに必要なのは、目の前の問題を個人の能力や意欲のせいにせず、その行動を生み出している役割、ルール、情報の流れ、関係性を見る力です。現状を深く理解した後には、これまでのやり方や成功体験のうち、何を残し、何を手放すのかを考える必要があります。そして、「これから自分たちはどのような仕事や職場をつくりたいのか」という未来の方向性に向き合わなければなりません。
次回は、U理論の最も深い段階である「プレゼンシング」を取り上げます。
このコラムの詳しい内容は、noteの記事でご覧ください。


